智美が亮介と会っているところを写真に収めた誠。
途中で職務質問をされ、亮介の顔を撮ることはできなかった。
智美が浮気をしている証拠を突きつけられた創は、精神的にかなりのダメージを負った。一人で飲みたい気分になり入った店は、旧友である剛の店だった。久しぶりの再会を喜ぶ二人だったが、剛の放った言葉に、創は暗い過去の出来事を思い出す羽目になるのだが……。
秘密(25)
「なあ、久しぶりにあったんだ。もっと楽しい話をしないか?」
「あ……そ、そうだな。そういえばさ、お前、今どんな仕事をしてるんだ?」
剛が無難な質問を投げかけてきた。俺がその話をしたくないと悟ったようだ。俺たちはしばらく、何気ない会話を続けた。
「それじゃぁ、また来るよ」
「ああ、いつでも来てくれ。今度は智美ちゃんも一緒に」
「ああ。智美もきっと懐かしがると思うぜ。それじゃあな」
手を挙げ店の引き戸を開けようとしたとき、剛が後ろから語りかけてきた。
「なぁ、創……今日は悪かったな。嫌な事を思い出させてしまって。あまり気にするなよ。何て言うかな……若げの至りっていうかさ……彼女もあそこまでしなくても、って、俺も思うからさ……それに、俺が創の立場だったら俺も同じように逃げてたかもしれない……だから」
「もういいよ。過ぎたことだ。今日は楽しかったよ、それじゃあ」
俺は後ろも振り向かず、店を出た。夕方よりも風が冷たくなってる。肩をすくめ、背中を丸めるようにしながら、俺は駅へと向かった。
電車の中は暖房がきいていた。座席の背もたれに身体を預ける。心地よい揺れが眠りを誘う。少し酔っているせいか、瞼が自然と下がってくる。
森の中ある湖の湖畔にいた。
一人の女性がボートの上で佇んでいた。
真っ白なワンピースを着た、髪の長い女性。彼女はボートの上から湖畔にいる俺をじっと見つめていた。
「あなたの罪は消えない……消させない……絶対に」