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恋愛 / ラブ・ストーリー

LOTUS special 〜Birdie in Boots〜 <2>

   2010年12月9日  

「アンタねぇ、この世のありとあらゆる鳥類のなかで、いっちばん素直でかわいくて賢くて優しくて、陽気でお茶目な文鳥ちゃんに、チョコレートなんか寄越すバカがドコにいるのよ!! アレがひとっかけらでも口に入ってみなさいよ、アタシ死んじゃうのよッ!!」
「……………………」
「ちょっとアンタ、アタシの話、聞いてるの? 何よ、さっきから鳩ぽっぽが豆鉄砲食らったような顔しちゃってさ。どんな顔だか見たことないけど、きっと今のアンタみたいな、超おマヌケな顔に決まってるわよ」
 もうひとつ、真理との決定的な違いは、その声でした。
 男にしては高い声で、なぜか女言葉を使っていますが、それでもやはり男の声です。そんな相手がいきなり目の前に現れたのですから、真理が驚くのも無理はありませんでした。
「ど……どうりでバカみたいに安い値段で泊めてくれると思った。あは、あはは、そうだよね。こんなオカマみたいな幽霊が出る部屋だもん、そりゃタダ同然で泊めるよねぇ」
「ちょっと、誰がオカマの幽霊ですって?」
「うーわ、アタシ、幽霊とハナシ通じちゃってるし。ということは……つまりアタシって、すっごい霊感があるってことじゃん?!」
 真理ははたと手を打って、ぱっと顔を輝かせました。
 こんなに強力な霊感があるならば、占い師か何か、そのあたりで食べて行けるのではないでしょうか。将来への展望が、一気に開けたような気分です。真理は早速、占い師に必要なものを帳面に書き出してみようと思いましたが、そんな浮かれた気分に水を差すようなことを、目の前の茶髪の青年が言いました。
「はン、何バカなこと言ってんのよ。アンタに霊感なんかあるわけないでしょ」
「あるよ。あるから、アンタが見えるんだってば」
「バカね、違うでしょ。アタシが幽霊だっていう、その発想自体が間違ってるのよ! まったく、とんだ見当違いだわよ。ホラ、この輝かしくもセクシーなあんよを見なさいっての!」
 そう言って、青年は、赤い絹の靴下に包まれた自称「美脚」を真理に見せつけました。美しく整ってはいますが、その筋肉質な脚は、どこからどう見ても男のものです。もしこれが絶世の美少年のものならば、まだ多少は見る価値があったかもしれませんが、自分よりひとつふたつ年上らしき青年の、しかもどこで調達してきたのか、真紅の靴下に包まれた脚なのです。
 真理は露骨に嫌そうな顔をしましたが、幽霊ではないとしたら、この青年は一体何者なのでしょう。泥棒なのでしょうか。そう考えると急に怖くなって、真理は数歩、あとじさりました。
「ゆ、幽霊じゃないなら誰なの。あんた、どこから入ってきたの」
「んもう、物分かりの悪いコねッ。さっき言ったでしょ、アタシ、文鳥よ。アンタのパパちゃんが言ってた、すこぶるつきの珍しい、ブルネットにルビーアイの超絶イケメン文鳥よ」
「ぶっ、文鳥?!」
 びっくり仰天して手に持っていた竹かごに目をやれば、たしかに例の茶色の文鳥はいません。さっき猛烈な勢いで飛び出して行ったきり、室内のどこにもいる気配がないのです。
「う、う、うそ…………」
 真理が真っ青な顔をして茶髪の青年を見上げると、青年は「アラやだ、忘れてたわv」と言って、自分の肩甲骨をポンポンと叩きました。すると、その背中にたちまち亜麻色の翼が現れ、真理は今度こそ、悲鳴のような大声を上げて「おばけ文鳥!」と叫びました。

 

《つづく》

 

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シリーズリンク

LOTUS special 〜Birdie in Boots〜<全6話> 第1話第2話第3話第4話第5話第6話

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