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ミステリー

愛の聖域 前編

   

 はじめの頃何度も耳にした言葉だった。
 女の真向かいにいるベテラン刑事は、一方的に責めるのに対し、成田という男は口を挟むときは必ず「どうして?」「なんで?」と切り出していた。
 どのようにも受け取れる切り出しの言葉。

 同じ刑事なのに対照的な2人。
 女はそのやりとりがおかしくて仕方がなかった。
 それがまた始まるのか?
 繰り返されると予想できる風景を脳裏に描き、この取り調べ室に入って初めて、口元を緩めたのだった。

「何がおかしい?」

 低く重い声質で向の刑事が口を開く。
 だがその刑事の問いに女は答えない。
 視線をゆっくり斜め横の刑事、成田へと流し、ゆっくりと唇を動かした。

「刑事さん。その言葉の続きは? この刑事みたいに私がやったとでも?」

 女が言葉を発したのは、拘留しこの場所に連れてきた時に言った「黙秘します」以来の言葉だった。
 それから一切、この取調室では一言も発していない。
 どんな言葉で問い掛けられても、結局のところ、言い方が違えど誰もが思っているのだ、この女『福間絹代』が犯人であると。
 だが絹代はそのことに否定も肯定もしていない。
 ただ待っているのだ。時が過ぎ、突破口を切り出すのはどちらなのかを。
 その期限を拘留期間内と決めて――

 

-ミステリー

シリーズリンク

愛の聖域<全2話> 第1話第2話

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