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ハードボイルド

南関東文科大学 タイムカプセル発掘隊 第二話 教授選への「ダシコミ」(中)

   

「はあ……困りましたね」
 松下は、坂上に、聞えよがしに大きなため息をついた。
 千夏の歯ぎしりの音がここまで聞こえてきそうだ。
 本来であれば、「それじゃあ、今日は中止です。まったく、なんであなたがこの歳までうだつが上がらないか、よく理解できましたよ。教授にならなくて正解ですよ、この大学のためにはね」ぐらいの事を言ってやるところだが、現実はそうもいかない。
 坂上は、南関東文科大学の関係者、すなわち身内である。
 すなわち、法的にかなりまずい、松下たちの「仕事」について詳しく知ってもいるし、松下の今後を左右できるだけの権限を持つ一人だということでもある。
 さらには、坂上の身分は「保証」されている。
 松下たちが仕事を蹴って、望みをかなえられなかったとしても、坂上は準教授であり続けることができる。
 関係者として「報復」ができるということだ。
 松下たちが、坂上の不正な企てを告発して、つまり、依頼者を売って、「仕事」に対する信頼感を全てなげうった上に、自らの立場をも危うくさせなければ、この「報復」を防ぐことはできないだろう。
 本末転倒ですらないというわけだ。
「分かった。請け負いますよ、他ならぬ先生の頼みですからね。ただ、成功報酬はがっちり頂きますからね」
 選択する権利がはじめから用意されていなかった松下は、内心の不満を悪態として表現しつつ、依頼を受け入れた。
 普段の自分の態度とはまるで違うが、実際、敵の備えが分からないところに、突っ込まざるを得ないというのは、不満を表に出さないとやっていられないような悪条件である。

 

-ハードボイルド

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